佐世保市立清水小学校

施設概要

所在地
長崎県佐世保市[ ]
用途
小学校
構造
RC、S
規模
地上5階
延床面積
6,532m2
竣工
2006年9月

受賞歴

2009年
佐世保市景観デザイン賞
2009年
建築九州賞(作品賞) 一般建築部門

フォト & プロジェクト詳細

ステップテラスによる自然を身近に感じる学習空間

傾斜地であるこの特色を最大限に生かすために、学校を3つの棟に分割し、それぞれが敷地レベルに応じてセットバックする形態とすることで、低中高学年専用の屋上庭園をもつクラスルームの配置が可能となりました。2階を低学年、3階を中学年、4階が高学年の階として設定し、専用の屋上庭園(屋上ステップテラス)と共に教室内外が一体となった学習空間を提供します。それぞれのステップテラスからは下階の様子が一望でき、学校全体で児童の活動を感じることができる構成です。学習でつかれた頭をリフレッシュさせたり、憩いの場として最適の場所です。

吹抜ごしに活動が見える安全・安心な学校

校舎は中庭を介して3棟に分節配置し、中庭に面する部分は吹き抜け廊下やガラスによる見通しのよい空間とすることで、複雑な学校構成であるにも関わらず、各棟相互の視覚的、感覚的な空間の連続性を保った場所を確保しました。どこにいても見通しがよく、また死角が少ないオープンな構成は、防犯上の観点からも安全安心な計画です。

メディアセンターを中心に段状に連なる多様な学習空間

2階に学校の情報を集約化するオープンな図書館、パソコン教室からなるメディアセンターを配置しました。各棟をつなぐ出会いの階段(今は「さわやかあいさつ階段」と呼ばれている)から児童がこの場所を通るように配置することで、全児童が自然に情報に接するために集まり、交流を高める場として機能することを意図しました。現在では図書の貸し出し冊数やパソコン室の利用頻度が格段に伸びてきています。

地域開放の場としての多目的ホール

1階には150人が収容できる多目的ホールがあります。総合的な学習など学年で合同授業をするのに最適な場所です。可動式の机、イスにより学年集会や発表会、昼はランチルームなど幅広い活用をしてます。学年合同給食では1年1組と6年1組というように兄弟学級での給食を行うことで仲間作りにも役立っています。

内外が一体:クラスルームと多目的スペース

教室前の廊下はすべて多目的スペースとし、各ゾーン間の移動空間および学習スペースにおける多彩な建築的しつらえを重視した場を計画しました。単調なスペースを、家具や水周りによって分節しつつ繋がりをもたせることで、児童の居場所づくりを行いました。

学校と生徒を結ぶ「さわやかあいさつ階段」

昇降口から5階まで一直線に伸びる広くて大きな階段は全ての児童が利用することから、「さわやかあいさつ階段」と呼ばれ、生徒に親しまれています。生徒同士、職員、地域の人々など誰が出会っても明るいあいさつの声が響きわたっている学校のシンボルであります。またこの階段は風の力を受けて自然に開閉するバランス式逆流防止窓を設置し、自然換気を視覚的にも確認できます。

設計者からの一言

清水小学校は旧制佐世保中学校発祥の地であり、明治5年開校の旧八幡小学校、大正8年開校の保立小学校と佐世保市の歴史を背負った学校を背景にもつ学校です。校庭を包み込むように息づく開校当初からの巨木群、記念碑、石垣などを残しながら急傾斜の敷地での造成を最小限に留め、絶滅危惧種であるカスミサンショウウオの生息域である敷地西側の環境保全を図ったこの計画は、地域の歴史と自然環境の保全と学校建設を両立させたものです。

利用者からの一言

「明るいですね。きれいですね。これまでの学校とは全く違った雰囲気ですね。」というのが、多くの来校者の言葉である。新校舎に移って2年数か月、本当にそう思う。壁を強化ガラスにすることにより、採光は勿論のこと「外から中が、中から外が」常に見える状態にあり、児童の様子を捉えやすく、防犯上の観点からも優れた施設である。職員室も周りがすべてガラス張りで、いつも誰かに見られているようで落ち着かないといった声が当初は聞かれたが、現在では、開放的で児童の様子も観察でき、過ごしやすいという声に変ってきている。光を感じ、自然環境に恵まれた素晴らしい施設である。

清水小学校校長 溝内 辰生

撮影者:ハシモト写真事務所