Chairman. HOSODA MESSAGE

弊社代表取締役会長・細田雅春の取材記事や発表した文章などを随時掲載しております。

代表取締役社長

シリーズ 建築設計事務所 新たな地平を開く
知識、感性生かす見識育む

「最近の建築が方向性を見失い、表層の美しさや快適さばかりに関心が集まることに強い違和感がある」と佐藤総合計画の細田雅春社長は語る。建築は本来、社会のさまざまな状況や変化と不可分に連動し同調するものであり、「きれい事だけではない、さまざまな矛盾や葛藤をすべて抱えながら、それを乗り越えて最終的に美しい建築にもっていけるかどうかが重要」だと説く。

前期は売上が80億円を超えたが、「現状の事務所の規模としては大きすぎる数字」であり、「設計の質とのバランスを考えれば、本来は70億台に収めるべき」との考えを示す。ただ、プロポーザルやコンペで設計者が選ばれる以上は「勝率を上げる必要は当然あるが、当落を制御することができるわけではないので、数字にこだわるつもりはなくてもこだわらざるを得ない側面もある」とも。

その上で「受注のストックと完成のバランス」を図りつつ、「なんでもやるのではなく、事務所にとってふさわしい領域の仕事を目指していくことを考え、選択受注の可能性も今年度は模索したい」と精妙な舵取りを目指す。

建築設計界に限らず仕事量が増大する中で「とにかく人を集めることに右往左往している」状況にも疑義を差し挟む。「忙しいからただ人を集めるようなことをやっていたらいずれ必ず破綻を起こす」と。

いま最も注力しているのが新人教育以上に「本当に中枢な人間、デザインや技術、あるいは環境問題をリードできる人間の再教育と意識改革」だ。なによりも「優れた見識を持つ人間をいかに育てるか」を重要視している。

「最先端の知識を持つことが優れていることだと多くの人が錯覚を起こしている。知識は重要だが、それをどういまの社会に、あるいは建築、都市に哲学をもって使いこなしていくか。知識におぼれて哲学や見識を持っていなければ何の役にも立たない」と語気を強める。

もちろん使いこなすのは「最先端」だけでない。「古い技術やローテクを現代に生かし、人間の豊かな感性を大事にする建築や都市とはどうあるべきかを考えること。それが見識であり哲学ではないか」と指摘。こうした見識を育てるため、議論の場を毎週設けているほか、国際交流・研修にも積極的に取り組んでいる。「内弁慶では絶対にダメだ。異なる視点や文化にもまれることで互いに見識を高めるような交流を深めていくことがより問われている」と見通す。その成果も徐々に出てきつつあることも実感している。

「働き方」についても「物理的な制限だけでなく、最も合理的で、かつみんなが共感できる働く環境をどう維持できるかを考えていく。その時に重要なのは上に立つ人の意識改革がどこまでできるか。それによって社会は変わっていく」と、中枢を担う人材の意識改革がここでも重要であることを繰り返し強調。

その上で、「社長のノウハウ、見識もすべて、若い人たちまで共有して議論するような事務所でなければこれからは生き延びていくことはできない」と、コミュニケーションと相互信頼に基づきながら、自律的に意識を高め合う組織を追求する。

日刊建設通信新聞
 2017年8月7日掲載