鞍手町庁舎 Nearly ZEB認証とCASBEE-ウェルネスオフィス Sランク認証の両者を取得
私たち佐藤総合計画が設計を手がけた「鞍手町庁舎(福岡県)」がNearly ZEBとCASBEE-ウェルネスオフィス Sランクの両者の認証を取得しました。
公共施設においてこれら2つの認証を取得した事例は全国で初めてとなります(2024年4月現在、当社調べ)。
鞍手町は、将来に向けて行政サービスを維持・向上させるため、中央公民館や体育館、病院などが集まるまちの中心部に庁舎を移転し、公共施設をつなぐことで利便性を高めるコンパクトなまちづくりを進めています。あわせて、鞍手町は2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」を宣言しています。新庁舎はこの宣言に基づき、プロポーザルの時点からNearly ZEBを目標として計画されました。
私たちは、これからの時代を先導する環境親和型庁舎となることを念頭に、Nearly ZEBはもちろんのこと、利用者(職員、町民)のウェルネス(快適性、健康性、知的生産性)の向上や地域全体のBCPの拠点となることを目指しました。
Nearly ZEBのBELS認証取得
一次エネルギー消費量削減率は78%(省エネルギー:53%、創エネルギー:25%)、BEI値は0.22となりました。2024年4月現在、Nearly ZEBのBELS認証を取得した庁舎は鞍手町庁舎を含めて5件しかありません。
CASBEE-ウェルネスオフィス Sランクを達成
設計にあたっては、健康性・快適性や安全・安心性などについてバランスよく配慮し、ウェルネス性を高めました。また、Nearly ZEBとCASBEE-ウェルネスオフィス Sランクの両者を達成した庁舎は全国初の事例です(2024年4月現在、当社調べ)。
レジリエンス強化型ZEB実証事業に採択
環境省が進める令和4年度の「建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業」のうち、「レジリエンス強化型ZEB実証事業」に採択されました。Nearly ZEBを達成したことにより、対象工事費に対する補助率は3/5となりました。
鞍手町庁舎は環境親和型庁舎を目指し、さまざまな手法を用いて設計を行いました。
高い外皮性能と開放的な空間を両立させた形態
3階に「エコルーフ」を設けて軒・庇を深く張り出し、日射侵入熱を大幅に低減しました。さらに高断熱化により外皮性能を高め空調負荷を低減します。1,2階共用部や執務室はCH=3.0m以上確保した開放的な空間とし、カーテンウォールで見通しが良く周囲の緑が感じられるウェルネスな空間としました。
天井放射パネル冷暖房システムと無線制御可能なタスク・アンビエント照明
搬送動力が小さい天井放射パネル冷暖房システムにより省エネルギーを実現。放射効果で心地よい温熱環境を実現し、ウェルネスを高めています。熱源には構造体「エコストラクチャー」を通して供給される地中熱も活用しています。照明は、上部配光では放射パネルを照らして明るさ感を確保する、機械設備と電気設備を統合したデザインとしました。また、生体リズムに合わせて照度・色温度を制御、節電効果に加えてウェルネス(知的生産性)の向上を図っています。
放射冷暖房と一方向の適度な気流感で快適性を向上させながら感染リスクの低減も実現、照明の下部配光は職員が所持するタブレットからオンデマンドで無線調光・調色制御が可能です。
太陽光発電設備を中心とした地域EMSの構築
九州電力と協働し、蓄電池の設置と別敷地の周辺施設を含めた一括受電を行います。それにより、太陽光発電の余剰電力を活用して地区全体のエネルギー効率を高めます。
災害時には本庁舎から避難施設への給電も可能で、地域全体のレジリエンス機能の強化にも寄与します。
今後の取り組み
竣工後(2024年10月予定)は、大学などの研究機関と連携して、一次エネルギー消費量、各種システムの運転状況のモニタリング、運転改善案の立案などを行い、継続的なエネルギーマネジメントを進めます。将来的には、創エネルギー設備を増強することにより、『ZEB』(NET ZEB)庁舎の実現を目指します。