『広場が庁舎』

建築を考える時、都市を含めた環境の課題を わたしたちは、建築で応えていく

2022年11月25日 取り組み

Architects‘ writings: 01 志木市庁舎

「ルビンの壺」が好例だ。ものごとには両義性がある、どちらも等価ある、それが本質なのだ、ということをわたしたちば学びたい。

建築も、わたしたちの身近にあふれる道、公園、橋、川といったと要素と一体となって、都市が成り立っていることに気がつく。
建築との主従の関係はなく、両義性をもつものなのだ。

その考え方は、建築を考える上では、平面だけでなく断面にも及ぶ。

だから、わたしたちは、「広場」にこだわりたい。

  • 「グラス」=「Uネック」

  • 「ルビンの壺」

  • 断面ダイアグラム

  • 断面も両義性をもつ

求心力を持たせたい

弧を描くテラスが積層する。深い軒下は、まちを一望する活動の場となる。志木市の“市民力”の姿が映し出される。広場に市民が溢れかえる時、テラスはさながら観客席となり、イベントを鮮やかに彩る。ここを求心力をうみだす場にしたい、わたしたちはそう考え、広場をつくった。

コミュニケーションに働きかける

広場は、通りとフラットにつながっていない。少しだけ高い。段にして5段。これは、ちょうど縁側の縁台のような高さだ。少しだけ視点が高い、それだけで日常の景色は新鮮に感じられる。だから、この場に立つと、きっと会話もはずみ、人と人との距離は近く感じられるはずだ。縁側のように。

都市のレジリエンスを高める

現代の広場に求められことは何か。広場をつくることは、その意味を考えることでもある。川は舟運をもたらしてきたが、時に牙をむく。水害だ。まちづくりに必要なこと、それは、川との共存である。広場は、川の氾濫を凌ぐ高さとした。ここに来れば守られる、その安心感をつくりだしたい。

ここにしかないオープンスペース

建物が取り囲む西欧の広場とは、少し趣きが異なる。ここには庁舎が面するだけだ。そのかわりに、川のせせらぎ、遡上する風、土手の桜、公園の緑、そして通りを行き交う人々、が広場を包み込む。このまちならではの穏やかな風景そのものだ。志木の空気感をまとう、そのような広場だ。

ドラマが生まれることを期待して

階段のある広場をつくりだした。階段は、視点に変化を与え、高揚感を生みだす役割をもつ。映画では、印象的なワンシーンに必ずといっていいほど、階段は登場する。わたしたちは、日常の中に、印象的で、記憶に残る場をつくりたい。ドラマが生まれる場をつくりたい。そして、都市にいきいきとした躍動感を与えたい。

撮影:川澄・小林研二写真事務所

STAFF

  • 鳴海雅人
  • 早川謙二
  • 多々良邦弘
  • 勝山正直
  • 青江悠
  • 蓮池恒
  • 周防尚
  • 小幡俊行
  • 山品太輝
  • 脇田悠梨

施設概要

名称

志木市庁舎

所在地

埼玉県志木市

用途

庁舎

構造

SRC、S造(免震構造)

規模

地上4階、地下1階

延床面積

12,621.63㎡

竣工

2022年6月