杭州未来科技文化中心 国際設計競技

“世界から日本、日本から世界を知る” ―視点を転換して建築・都市をみる―

2023年3月9日 取り組み

Architects‘ writings: 03 杭州未来科技文化中心 国際設計競技

“世界から日本、日本から世界を知る” ―視点を転換して建築・都市をみる―

私たちは 2000 年より中国のプロジェクトに積極的に取り組んでいる。ほとんどが国際コンペからの参加となるが、中国で国際コンペに取り組む意義は、世界の建築家と戦える感性や構想力、デザイン力を身につけるためである。

中国と日本という二つの舞台の経験が、視点を転換して物事を考える契機となり、新しい感性を持った建築家を生むと考えている。

杭州未来科技文化中心 国際設計競技

海外の名だたる建築家が参加する当設計競技では各社持ち味を全面に押し出した激烈な競争が予想された。我々はアジアで中国国内以外の唯一の参加である日本の設計事務所の代表として9者 ( 他8者:CCDI,GMP,Zaha Hadid Architects, 中国建築設計研究院 ,Foster+Partners,北京設計院,Gensler,Populous) に指名され、世界に存在感を示す機会と捉えた。

今回、中国の建築にみられる問題意識の変化にどのように答えるかが大きな課題であった。これまではアイコンとしての目立つ建築が求められていたが、現在は 2060 年(中国)カーボンニュートラルを見据えた地球環境への配慮や歴史と文化を尊重する地域性、また身体性を感じる空間づくりへの関心が非常に高まっている。そのような背景の中で、「都市スケールとヒューマンスケールをシームレスにつなぐ」「文脈を大切にしたかたちと現地の気候親和性、環境提案の融合」の2つを提案の骨格として具体的に示し、これからの中国の建築への重要な問題提起をおこなった。

建築と都市・自然・デジタルを融合するスポーツエンターテイメント・ハブ

敷地は中国の “新3大かまど都市” の呼び名が付くほどの酷暑が有名な杭州市に位置する。厳しい環境に適応、地元の文化や自然と融合し、全年 24 時間人で賑わうサッカースタジアムを中心としたスポーツコンプレックスが求められた。

“雲の庇” と” 緑の台地”

我々は、気候を生み出す存在としての雲と、現地の文化として根付いた傘をヒントに全年快適でいかなる天気でも人で賑わう環境型スポーツコンプレックスを提案した。

雲の庇は光を遮蔽し、水を集め、風を誘導する環境装置としての庇である。3施設の外周部に中間領域を生み出し、市民活動に快適な活動・憩いの場をつくりだす。また庇は、金属パネル、太陽光発電パネル、テラコッタとガラスによって構成され、太陽の向きや日照条件によって、傾斜や材質をパラメトリックにデザインし、遮光、蒸散効果による冷却効果を促すことで、快適な微気候を形成する。

この庇に呼応する存在として、杭州の水と緑を立体的に構成する「緑の台地」を足元レベルに計画した。杭州特有の水と緑の環境を立体的に構成することで、雨水の流出抑制や利用等、敷地全体を通した水の循環を促す。
水と緑の憩いの空間は、「緑の谷状の商業空間」から「緑の台地が積層したスタジアム外周」まで連続させることで、「ヒューマンスケールな商業空間」と「都市スケールのスタジアム」をシームレスに融合した。

自然の循環と人の関係性を再構築する

我々はこのプロジェクトを通して、「自然とは、さまざまな要素が壮大なスケールで複雑な過程を経て循環する、地球本来のもつ循環系のことだと捉えた。「自然の循環」と「人(都市や建築)」の関係性をデザインすることで、杭州独自の未来に持続する環境型のスポーツコンプレックスを提案した。

RELATED MEMBERS

  • 設計担当
  • 鉾岩崇
  • 飛永直樹
  • 糸瀬賢司
  • 渡邉拓也
  • 岡本晋作
  • 林映嵐
  • 郭羽揚
  • 徐駿
  • 陸暢
  • 周冠龍

PROJECT PROFILE

敷地

中国浙江省杭州市余杭区

敷地面積

263,900㎡

延床面積

237,000㎡

用途

専用サッカー場、総合体育館、水泳館、商業

審査結果

指名9者(中国3者、ドイツ1者、イギリス2者、アメリカ1者、オーストラリア1者、日本1者)中4位